甘酒のコクと餡の甘さが調和した「大手まんぢゅう」

豊潤な甘酒の香りと味わいの大手まんぢゅう

甘くて美味しい味わいと、優れた栄養価が魅力の甘酒です。
発酵食品として現代でも改めてその良さが見直されており、“飲む点滴”と呼ばれることもあります。
この甘酒、そのまま飲んでも美味しいのですが、古くから和菓子の材料にも使われてきました。
今回ご紹介する「大手まんぢゅう」も、甘酒を使った酒まんじゅうとして岡山県で180年以上もの長きにわたって愛されている伝統の銘菓です。

岡山は古くから米処として知られており、美味しいご飯はもちろんのこと、酒造りやお菓子作りにも生かされてきました。
大手まんぢゅうは、岡山で作られた良質のお米をじっくりと熟成・発光させた甘酒の生地が特徴です。
極上の備前米を材料に椛(こうじ)を自家製造し、これにもち米などを加えながらじっくりと熟成させて甘酒へと仕上げます。
できあがった甘酒をさらに発酵させて、独特の甘酒の生地が生まれるのです。

この薄く薄く仕上げた甘酒の生地で、上品な甘さの漉し餡を優しく包み込み、さらに蒸し上げたのが大手まんぢゅうです。
甘酒で作り上げた薄皮からのぞく、深みのある紫色の漉し餡は、まるで雪をかぶった宝石のよう。
食べて美味しいのは言うまでもありませんが、美しく愛らしい見た目も人気の秘密といえるでしょう。

蒸し上げられた大手まんじゅうは甘酒の豊潤な香りが湯気と共に立ち上り、甘酒ならではのコクとうまみがほどよい甘さの漉し餡と調和し、極上の味わいを作り出しています。
冷めたものを食べるのが一般的ですが、蒸したての熱々も絶品です。

岡山藩主が愛した銘菓

大手まんじゅうを販売しているのは、大手饅頭伊部屋です。
そのルーツは、江戸時代にさかのぼります。
天保8年に岡山城の大手門の近くで、このお菓子の販売を始めました。
それをお殿様が召し上がってたいそう気に入り、茶会の席ではお茶請けとして大手まんじゅうが欠かせないものとなりました。

大手門の近くで販売されていたことから「大手まんじゅう」と呼ばれるようになりましたが、当時の岡山藩主の池田斉敏が名付けたと伝えられています。
池田斉敏以降、代々のお殿様が愛した「大手まんじゅう」は、現代においてもその伝統を忠実に守り当時とかわらぬ美味しさを受け継いでいます。

伝統的な手法が美味しさの秘密ですが、それを支えるのが原材料へのこだわりです。
小豆は良質の北海道産、砂糖は糖度99.9%特注品である白双糖(しろざらめ)、国産の極上小麦粉、水は備前の名水として知られる雄町の水、米は備前米と、厳選した素材が使われています。
昔ながらの手法と厳選された素材から一つ一つていねいに手作りされる大手まんじゅう、岡山のお土産の中でもイチオシの銘菓です。